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第349話 真実は
普通に訊くつもりだった。
そう。事務的に簡潔に。
そして九条から答えを聞いてイエスだろうとノーだろうと、結果は同じで。
後は「もう九条さんには会えません」そう言って縁を切るだけだった。
ヤクザと関わって録な事に合わないのは目に見えている。
いくら自分が子どもで無知でもそこまで馬鹿じゃない。
ヤクザがどんな団体でどんな事をしているかなんて、マンガやテレビドラマだけでなくニュースでもネットでも情報は溢れる程に流れているのだから。
けれど、実をいうと九条の事はあれから詳しく調べなかった。
ヤクザならば細かく事情を把握しておく為にもネットで検索をかければ山ほど出てきそうなのに、しなかった…出来なかったのが正しいのかもしれない。
九条さんの答えは…九条さんとサヨナラするんだ…これで。
「フゥッ…」
九条の溜め息に一瞬ビクッと肩が揺れた。
それでも流れ始めた涙は止まりそうにない。
嗚咽することなく静かに泣きながら、祐羽は次の言葉に耳を傾けた。
顔は上げられそうにない。
「俺は旭狼会とカタギの会社を二足のわらじでやってる。…正直お前の親父の勤めている会社との提携は他の会社との兼ね合いで少し前から決めあぐねてた」
どうやら亮介の会社との提携は、祐羽と知り合う以前から視野には入れていたということらしい。
「そんな最中にお前と会った」
地面を見つめる祐羽にも九条が身動ぎしたのが分かった。
「これは使えると思った。お前の親父の会社と提携した事で、お前は親父を裏切れない。そしてその為には俺の条件を飲む必要があり、結果俺と離れづらくなる…これが大きな枷になるってな。だから契約した」
やっぱり…。
祐羽は更に溢れた涙に我慢しきれず小さく呻いた。
九条さんはお父さんの仕事を盾にして僕を…って、…え?あれ?
お父さんの会社じゃなくて、僕を?
ぎゃ、逆…っ、逆じゃないの?
「く、九条さん…っ!」
祐羽はグイッと涙を拭うと、涙に濡れた顔を上げた。
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