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第350話 1番聞きたいこと

「九条さんは…僕を盾にして、お父さんの会社をいいように扱おうって思ったんじゃ…?」 疑う様子で問いかけた祐羽に、九条がクッと小さく笑った。 「俺の会社がそんな姑息な事をしなければならないほど小さいとでも思ってるのか?そんな事せずとも経営には微塵も影響などない」 「そう…ですか…」 あまりにも大した事ではないと言われてしまった。 確かに九条の会社は調べた時にその規模を知ってるから、それは本当だと思う。 「ん?」 あれ? ということは…っていうか、待って。 九条さん、今、何て言ったっけ? 祐羽は目が点になった。 それから記憶を少し巻き戻す。 『俺と離れづらくなる…これが大きな枷になる』 そこまで思い出して祐羽は口元に手を当てた。 嘘だ、嘘…。 そんな事が有るわけない。 僕が九条さんと離れづらくなる為に、って…それって僕が九条さんから離れられなくさせる為って事だよね? いや、そんなわけない…! だけど、お父さんも言ってた。 九条さんの会社との提携はもの凄いプロジェクトだ!って。 そんな大企業からすればお父さんの会社との提携は絶対必要ではなかったはずだ。 それなのに契約したのは…。 「え…。本当に…?」 本当に僕を九条さんの側に繋ぎ止めておく為に? その思いに至った瞬間、祐羽は全身の血が一気に沸き立つ様に感じた。 それが本当なら…本当ならどうして? 理由は? これが1番聞きたい事だった。 どうして、僕を…?

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