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第351話
訊きたい。
これは今日訊きたいと思っていた事のひとつであるし、あの体を無理矢理繋げられた時から1番気になっていた事だ。
どうして自分にあんな事をしたのか。
そして、どうして自分を側に置きたいと言うのか。
「俺の打算でお前の親父を利用したのは悪かった」
九条がこちらに向けていた視線を一瞬外したかと思うと、そう溢した。
九条さんが…謝った?
イメージに無い九条の姿に驚きしか湧かない。
打算と言ったが、九条にとって特別得にはらならない亮介の会社との提携に、それほどの物があったのか?と祐羽は真意を理解出来ない。
「けどな…俺も本気で欲しかったから許せ」
そう言って九条は、どこか自虐的に口元を歪めた。
「九条さん…」
って、何が?と内心首を傾げた。
何が欲しかったのか…。
僕にはさっぱり全然、九条さんの言ってる言葉の意味が分からないよ。
許すもなにも…別に怒ってない。
相変わらず気を抜けば涙が溢れるので、手の甲でまた拭うが切りがない。
涙で視界はぼやけるし声は震えるし、それにしても考える事が多すぎる。
よく分からないけど…悪さしようとかじゃないならいい…怒らない。
「グスッ…いいです。許してあげますけど…」
「そうか」
小さな嗚咽混じりにそう答えると、九条が何処か安堵した声を漏らす。
「はい…スンッ」
祐羽が嗚咽を抑えて目の前の九条を見ると、何だか気持ちが収まった様な安堵した雰囲気だ。
だけど祐羽はまだ肝心な事を九条の口から訊いていない。
この抱えたモヤモヤを払拭する為には、九条から聞くしか方法は無いと分かっている。
祐羽はざわつく胸に思わず手を当てた。
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