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第387話 ※

その手には名刺が一枚。 新倉の馴染みの店の女ホステスの物だ。 店名と店の番号、それから名前の他にプライベートナンバーが記載されている。 余計なお世話な事に、こうして若くてよさそうな女がいると九条に紹介してくる。 そこが新倉と会う時の面倒な一面であった。 九条が結婚していないせいで、自分の娘や相手を見繕っては「結婚しろ」と口出ししてくる親分衆等よりは余程マシではあるが…。 断るのも新倉の親切を無下にすることになる。 それに仕事で忙しく、最近女を抱いていない。 丁度発散したいと思っていたところだった。 こうして都合が合えば九条は女を抱くようにしていた。 新倉の紹介してくる女は、美人しかいない。 こちらとの関係を理解しており無理を言わない。 体も申し分なく、肉体的にも大抵満足出来る相手が殆んどである。 そして、ほぼ外れる事はない。 九条はそこまで乗り気では無かったが、今夜は流れに身を任せることにした。 とあるマンションの一室。 女の家のベッドで九条は体から熱を放出すると、息を吐いた。 九条の下で散々喘がされた女は、余りの激しい快楽に息も絶え絶えに横たわっていた。 その表情は幸せな女の顔だった。 九条は一度吐き出すと、直ぐに体を起こした。 スーツは着たままだったので、ゴムを捨て下半身を拭うだけで身支度を済ませた。 「えっ、もう帰るの?イヤだ帰らないで!お願い…!」 慌ててすがり付いてくる女に、九条は目を細めた。 「今度はいつ会えるの?私…九条さんの事…好きになっちゃった…!ね?もう1度、」 そこまで言うと、九条が女の手を無視して踵を返した。 そして部屋を出て行こうとする。 「えっ、ちょ…、」 今までこんな仕打ちを受けたことの無い女は、驚きに目を見開いた。

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