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第388話 ※

この顔と体で、どんな男も虜にしてきた。 とにかく金と権力のある男には、喜んで体を差し出してきた。 そんな自分に、女としての成功と幸せが湧いて出たのが今夜だったのだ。 ヤクザのオヤジに紹介されてどんな相手かと思っていたら、とんでもなく極上の男だった。 会った瞬間、とにかく抱かれたくて女の部分が直ぐに濡れた。 この人は運命の相手だ…!!! それが、一度抱かれただけ。 しかも片手間の様な扱いをされて、もう知らん顔をされてしまっている。 「待って!待ってよ、ねぇ…、九条さ、」 見苦しくも女がすがってくるのを一瞥もせず部屋を出ると入れ違いで部下達に任せると、九条は女の家を後にした。 「…フウッ」 今夜の女は外れだ。 喘ぐ声が耳障りだった。 おまけにアソコの絞まりも良くない。 あまり他の男の手垢がついた痕は好きではなかった。 そして他にも理由がある。 自分を見て女が体を自然と拓くのはいつもの事だ。 けれど、自分の立場を理解しており九条に体の関係以上は求めてはダメだと懸命に自制する姿が見られる。 それが今夜の女の熱量は、それを越えてしまっていた。 九条は女と体の関係以上は求めていない。 ただ単に体の内に溜まった熱を吐き出させさえすればいい。 何も求めてはいないが、こうして珠に勘違いする人間が出てくる。 気分が悪い…。 それこそ一度で二度と会わないのも当然としていた。

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