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第389話 ※
それから体が満足せずイライラしたせいで、すっかり高ぶっていた九条は、性格がサッパリしていて面倒が無いという理由で重宝している女の家へと向かった。
「えっ、九条さん?!どうぞ入って」
突然にも関わらず、女は喜んで迎え入れた。
「突然どうしたの?っ、あっ…!」
直ぐに求められて、嬉しいと心で叫びながらそのまま身を任せる。
それから進んで愛しい九条の性器を口に含むと精の匂いがして他の女の影を見つけ嫉妬する。しかし自分の所へ来てくれた!選んでくれた!と、直ぐにうっとり幸せを噛み締めた。
それから場所を移動した九条は、女を乱暴にベッドへ倒すと性急に体を重ねた。
先程の女への苛立ちをぶつけるように腰を振りアッサリと熱を出しきると、体だけは満足して女の中から出た。
熱は出しても心は重い。
昔の様に2度も3度もする気は起きなかった。
一方の女は激しい突き上げにそのまま達すると、ベッドに横になり目を閉じ余韻に浸っている。
しかし九条は決して寝る事はない。
少し休んだらいつも通り帰るつもりだ。
すると女が九条の胸にソッと手で触れてきた。
「…」
九条はスッと目を開き天井を見た。
「…か、一臣さん…」
この女との付き合いは半年。
九条と呼ばれはしても、下の名前で呼ばれたのは初めてだった。
女が九条の胸に頬を当ててくる。
普通なら美人で極上の体と、逆らわないいじらしい態度に他の男なら決して手放さないだろう。
けれど九条は違う。
「す…好きです。一臣さん。私、一臣さんのこと…愛してます」
この時で九条と女の関係は終わった。
「え…っ?!ま、待って!どこ行くの?!」
女を突き放すと、止める声も無視して黙々と着替えを済ませる。
それから泣きわめく女を無視して、九条は家を出た。
入れ替わりに今度も部下が入って行く。
うるさい女には口を慎む為のお願い事が必要だった。
「…チッ」
九条は小さく舌打ちした。
女は自分だけは特別だと思っていたようだが…九条に特別など一切無い。
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