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第399話 3
何故か音を立てることに抵抗感が生まれ、俺はじっとその場で動けなかった。
なんで俺はこんな風に息を殺してるんだ?
「…っ」
物陰に潜む自分の姿はどうやら相手には見えていないらしい。
床に這いつくばるようにしている俺は視線だけを向けた。
赤と青と紫の光の渦の向こうでクラゲ達がフワフワと泳いでいるその向こう。
イケメンと男子学生…少年くんが並んでクラゲ水槽を見つめていた。
「…綺麗」
少年くんが呟いたのが口の動きでなんとなく分かった。
ぼんやりと水槽を泳ぐクラゲを見つめている顔が純粋に目を輝かせて見とれている。
フワフワ漂うクラゲに自然と心奪われている様は、見ている自分も嬉しくなる。
というか、何故か彼から目が離せない。
少年くんはゆっくりと歩きながら見学して行く。
動物、好きなのかな…。
俺は気がつけば少年くんの横顔をじっと見つめていた。
さっきまでの妙な緊張感もなく、ただ純粋にクラゲを見つめる少年くんと同じ様に…。
なんか、…可愛いな。
いやいや待て、俺。
可愛いって何だ。
そう、そうだ。
年下の子どもは可愛い、それだ。
大人と違って純粋な心を持つっていいな~アハハ。
そう思っていると少年くんが表情をほんの僅かだが変えたのが分かった。
「?」
俺は何だ?と思って目を凝らした。
少年くんの視線が何処へ向いているのか?
視線の先には、あのイケメンが居た。
クラゲには興味ないのか一緒に並んで見ることはなく、先に出口付近へと行き見るともなく水槽へ視線を向けていた。
くそっ…。
思わず舌打ちしたくなった。
何もしていないのに、カッコイイと思わせてくる男が腹立たしい。
少年くんが今見つめているのは間違いなくヤツだった。
水槽越しに男を見ているその切ない様な熱い視線。
いつまでアイツを見てるつもりだよ。
何だか楽しい気持ちが一気に削がれてしまい、俺は胸に何かモヤモヤした感じを覚えた。
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