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第429話 4

まじまじと九条の顔を見上げる。 そこにはスーツに不穏な空気を纏い表情を崩さない九条がいた。 うん。 いつもの九条さんだ。 夜の時間は特に堅気じゃない雰囲気満々の九条が、アニメを一緒に観る? 何の冗談だろうか。 「えー…と、九条さん。本当に観るんですか?」 「たまにはお前に付き合ってやろう」 偉そうにイエスと言う。 まさか九条さんと一緒に映画館でアニメを観るなんて、これ現実? 「今からだと、あと15分後にレイトショーがあります」 祐羽が頭をグルグルさせている間に、中瀬が調べて知らせてくれる。 「おい、時間がない。行くぞ」 「あ、はいっ」 九条に肩を抱いて促されて、祐羽は眞山と中瀬をお供に映画館へ向かった。 映画館は週末ということもあってか、夜遅くでも客は平日に比べると若干多い。 おまけに人気のアニメというだけあって、リピーターも居るのかもしれない。 ロングヒットで公開期間が伸ばされたので、後半に突入したお陰で座席はまだ空いている様だ。 カウンター上のモニターに載っているアニメのタイトルの横には空席状況がサンカクで表示されている。 それを見て、祐羽はホッとした。 もし空席がないとなると、自分につきあってくれるという九条に申し訳ないからだ。 プラス自分もかなりガッカリするだろう。 「空席あるみたいで良かったですね」 隣の九条に伝えると軽く微笑まれる。 この微妙な匙加減な微笑みに祐羽はいつまで経っても慣れないのだ。

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