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第430話 5

「何か飲み物などご希望ありますか?先に私が購入しておきます」 背後に控えていた眞山が気を利かせてくれる。 「いいんですか?ありがとうございます。僕達は席を取っておきますね!」 「いえ。私達はここで、」 「お前達も来ればいい」 「…」 眞山が興味を一切持っていないことを知っておきながら意地悪く九条が提案する。 九条の口元が笑ったのを眞山は見逃さない。 「……分かりました。お供致します」 ぐっと堪えて眞山が頭を下げた。 それから揃って座席に着く。 開始前になってもそこまで人は多くなく、自分達の周りにも人は少ない。 祐羽の隣には九条が座り、隙の出来やすい後ろに眞山と中瀬が座った。 こんな所まで敵対する組織など来るわけはないのだが、常日頃の用心に越したことはない。 そう。こんなアニメの映画を観に来るヤクザはなかなか居ないだろうし、居たとしても襲ってくるなど微塵も無いと確信できる。 アニメには興味は一切無いが、九条の危機管理を徹底しなければならない身としては、苦でも何でもない。 眞山は前に座るふたりを見守りつつ、周囲には目を向けた。 その隣では中瀬がソワソワしていた。 憧れる眞山と行動することが圧倒的に増えたとはいえ、映画を一緒に観るなど夢の様な出来事だからだ。 祐羽と九条の警護を兼ねて付き添っていることを既に忘れて、隣の眞山ばかり気になる中瀬だった。

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