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第431話 6
「始まりましたね」
映画がいよいよ始まった。
そこからは祐羽はすっかり夢中になり、ストーリーの中へと意識を全て持っていかれてしまっていた。
そして話の中盤になり、お目当てのキャラであるマッドネスの登場に叫びそうになる。
カッコいい、マッドネス!!
凄い、凄いよ~マッドネス~!!
マッドネスの圧倒的な存在感と強さに見蕩れていた祐羽はふと気づいた。
ちょっとマッドネスって九条さんっぽいかも?
容姿端麗、頭脳明晰、圧倒的力と存在感、悪役。
悪役とは違うけど九条さんもヤクザだもんね…。
キャラのデザインもちょっと大人だし。
似てはないけど、そういう意味ではあってるかも。
それにしても九条さんって現実に居るもんね。ある意味マッドネスより凄いんじゃぁ…。
そう思い祐羽はジュースを飲みながら何気なく隣の九条を見た。
「!!」
目が合った。
偶然にしてもタイミングが良すぎて、ちょっと驚いてしまった。
それにしても表情はいつもと変わらないが、少しは楽しんでくれているのだろうか?
「お、おもしろいですか?」
誤魔化す様に慌ててコソッと訊いてみる。
すると九条が「あぁ」と頷いてくれてホッとする。
楽しくないのに付き合わせていたら申し訳ない。
けれど、こうして少しでも楽しんでくれたなら良かった。
もしかして、九条も子どもの頃アニメを観た思い出に浸っているのかもしれない。
それに九条さんが気に入ってくれたなら、マンガを今度貸してあげようかな?
嬉しくなって心置きなく再び映画の世界へと入り込んだ祐羽。
しかし、祐羽は盛大な勘違いをしている。
九条は確かに映画を見てはいた。
時々見てはいたものの特にアニメに思いなど馳せてない。
その視線の殆どが祐羽に注がれていたことを…。
映画も終わり。
余韻に浸る祐羽、漸く終わってホッとする眞山、この時間の終わりを惜しむ中瀬。
そして九条はというと長い足を組んで頬杖をついてヤクザ然とした見た目は変わりないが、心の中は穏やかだ。
それもそのはずで、祐羽の表情の変化や反応を心から楽しんだ九条。
映画もいいもんだな…と満足してエンドロールを見つめた。
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