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そして週末。
シンプルな白いシャツにスタイリッシュなデザインのジャケットを羽織り、細身のパンツに皮の靴というシンプルな格好で家を出た一臣は、眩しい日差しにうんざりした。
胸ポケットから取り出したサングラスを掛けると、指定された日時にカフェへと自分の足で赴いた。
いかにもな組員に車を店まで運転させるのも違うだろうし、何より初バイトに一臣は自身ひとりで全てを行いたいと思っていたからだ。
辿り着いた店の外観は、白を基調に緑の木々が映えるオシャレな感じで、いかにも女性が好みそうで流行っている理由にも納得出来る。
これなら客層も決まっているだろうし、チェーン店より落ち着いて働けるのではないだろうか。
一臣はそんな事を思いながら、まだオープン前の店へと足を踏み入れた。
ドアを開けると広い店内の入って正面から声が掛けられた。
「…!!バイト希望者?!」
一臣が店内へ入ると他にも何人も希望者らしき男女が多数居り、そのメンバーより奥に居た女性が目を見張り、それから顔を輝かせて素早く近づいてきた。
「はぁ、まぁそうです」
「どうぞどうぞ~順番に面接するから!ここに座って!ちょっと後になるけど~待っててね!!」
なんともヤル気の無さそうな感じで返事をするが、女性はニコニコご機嫌に笑いながらそう言った。
どうやら店の関係者らしい。
素直に従い他のメンバーと共に店内の椅子に足を組んで座る。
そうしていると別の関係者が奥から数人、姿を現した。
そして顔を見合わせると、ひとりが前に出た。
「今日はバイトに応募してくださり、ありがとうございます!これから面接を開始致しますので、呼ばれましたら中へお入りください。面接が終わりましたらご帰宅頂いて大丈夫ですよ。バイトの合否は明日中にお電話でお伝えさせて頂きます」
「では、履歴書を先にお預かり致します。呼ばれた方からお入りください」
こうして一臣は他のメンバーと共に呼ばれるのを待つことになった。
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