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番外編『九条一臣の成人式』
※九条の成人式の日、ヤクザの道へ進む第一歩の話。
※九条家登場します。
※後半少し女性との性的匂わせあり。
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高級住宅地でも一際大きな洋風のデザイナーズの屋敷。
周囲は不自然な程の高い塀で囲まれ、防犯カメラが何台も目を光らせている。
その邸宅の一室で、青年がひとり姿見の前に立っていた。
フルオーダーのブランドスーツの袖に腕を通した九条一臣は、ネクタイを締めると全身をチェックした。
フルオーダーだけに、一臣にピタリと合っていて体のシルエットがとてもよく見える。
そうして隙なく整え終えると、部屋を出て階下へと向かった。
廊下で道を開けた住み込みの組員達が、表情を明るくさせながら自分を見ているのが分かる。
「おめでとうございます!」と会う度に言われ鷹揚に頷いて応えた。
そうしてリビングへ入ると、待ってましたといわんばかりに、母・春子の嬉しそうな声が上がった。
春子は優しい顔立ちの通り、優しい性格をしている。
何故この極道の世界に嫁ごうと思ったのか、一臣の大きな疑問だ。
そんな春子は、息子の晴れ姿に目を細めて喜んでいる。
「一臣、おめでとう。スーツ似合ってるわよ」
「…成人式とか、めんどくせぇ」
そんな息子に対して、春子は不満そうに眉根を寄せた。
「まだそんなことを言ってるの?一生に一度のお祝いなんだから、同級生のお友だちも来てるんじゃないの?」
「そうだぞ一臣。今日は好きに楽しんで来いよ!明日は成人のお披露目パーティーするからのんびり出来ないからな!!」
するとソファにどっかりと座っていた父・英二が楽しそうに笑った。
完全に他人事なので、気楽な様だ。
「はぁ…、マジで止めてほしいんだけど」
「何を言ってるんだ一臣。ここで今のうちに、しっかり力を示しとかねぇとな!」
そんな英二の言葉に、一臣はげんなりとした。
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