517 / 1012

番外編『九条一臣の成人式』

※九条の成人式の日、ヤクザの道へ進む第一歩の話。 ※九条家登場します。 ※後半少し女性との性的匂わせあり。 ■■■■■ 高級住宅地でも一際大きな洋風のデザイナーズの屋敷。 周囲は不自然な程の高い塀で囲まれ、防犯カメラが何台も目を光らせている。 その邸宅の一室で、青年がひとり姿見の前に立っていた。 フルオーダーのブランドスーツの袖に腕を通した九条一臣は、ネクタイを締めると全身をチェックした。 フルオーダーだけに、一臣にピタリと合っていて体のシルエットがとてもよく見える。 そうして隙なく整え終えると、部屋を出て階下へと向かった。 廊下で道を開けた住み込みの組員達が、表情を明るくさせながら自分を見ているのが分かる。 「おめでとうございます!」と会う度に言われ鷹揚に頷いて応えた。 そうしてリビングへ入ると、待ってましたといわんばかりに、母・春子の嬉しそうな声が上がった。 春子は優しい顔立ちの通り、優しい性格をしている。 何故この極道の世界に嫁ごうと思ったのか、一臣の大きな疑問だ。 そんな春子は、息子の晴れ姿に目を細めて喜んでいる。 「一臣、おめでとう。スーツ似合ってるわよ」 「…成人式とか、めんどくせぇ」 そんな息子に対して、春子は不満そうに眉根を寄せた。 「まだそんなことを言ってるの?一生に一度のお祝いなんだから、同級生のお友だちも来てるんじゃないの?」 「そうだぞ一臣。今日は好きに楽しんで来いよ!明日は成人のお披露目パーティーするからのんびり出来ないからな!!」 するとソファにどっかりと座っていた父・英二が楽しそうに笑った。 完全に他人事なので、気楽な様だ。 「はぁ…、マジで止めてほしいんだけど」 「何を言ってるんだ一臣。ここで今のうちに、しっかり力を示しとかねぇとな!」 そんな英二の言葉に、一臣はげんなりとした。

ともだちにシェアしよう!