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「…」
何処か楽しげな父に、不機嫌さ全開で視線を送る。
「よし、じゃぁ行ってこい!楽しめよ!!」
そこには胡散臭い表情を浮かべた英二が、不適に立っていた。
こうして一臣は両側を黒服の男が頭を下げズラリと並んだ中央を歩いて会場へと向かった。
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成人式会場となっている大きな会場前の広場は、既にたくさんの人で溢れていた。
振り袖やスーツの華やかな女性陣や慣れないスーツ姿や派手な袴に身を包んだ新成人。
誰もが大人の仲間入りを喜んでいる様で、笑顔が明るい。
そこへ一臣の乗った車が横付けされた。
他の新成人の送迎車に混ざり、磨きあげられた黒の高級車が三台。
一台でも目に留まりやすいというのに、念の為にと前後に無駄な警護が着けられたので、余計に目立ってしまっていた。
会場付近の新成人達は、明らかに普通とは違う車の登場に、落ち着かない不穏な様子で遠巻きにしていた。
そんな空気を一切気にしないで、外側から組員がドアを開く。
車から一臣が降りると、周囲がザワッとした。
どんなヤツが降りてくるのかと不審な探りを入れていた視線が一転。
一瞬の静寂から煩いほどの女子の黄色い声が上がる。
呆気に取られる男子や女子と一緒に頬を染める男子まで現れる始末。
見事にブランドスーツをスマートに着こなした九条は、涼しい顔で前を見据えた。
長身に無駄に長い手足と整った相貌は、特別な存在だと周囲に知らしめた。
そんな一臣は視線を気にすることなく、部下の同行をひとりだけ許し、颯爽と会場を目指して歩き始めた。
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