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今日から二十歳も思えぬ新成人がごった返す中を一臣は足早に進む。
人混みを掻き分けずとも自然と十戒かと思わせる様に、左右へと道が開けていく。
その真ん中を美貌の青年が威風堂々と歩く様は、人々の目を保養した。
九条が目指したのは新成人の会場ではない。
その横に続く廊下を視線で確認する。
そして『関係者以外立ち入り禁止』と張り紙のある立て看板を無視してそのまま廊下を進んだ。
「ちょ、君。…あのねぇ、ここは関係者以外立ち入り禁止だよ。張り紙してたの見えなかったの~?」
歩いていると関係者らしき市の職員に呼び止められる。
一瞬、一臣の美貌に息を詰めるが我に返ると心底困るよ、と眉を垂らす。
「…」
思わず眉間に皺が寄り、不機嫌なオーラが出てしまうと、相手の職員はたじろいだ。
そこへ通りかかったらしい別の職員が、見かねて会話に加わった。
「何、どうしたの?」
「それが…」
どうやら先輩に当たる様だ。
先程の職員は、ホッとあからさまに表情を緩め説明をする。
「はぁ…お父さんですか?息子さんと会場へお戻り下さい。トイレでしたら反対の方にもありますんで」
どうやら部下を父親と勘違いしたのか、そんな事を言い始める。
他の成人を怖がらせぬ様に、組員の中でも優しい顔つきの男を選び、スーツも紺色の地味な物を着せていた。
そしていつもと違い空気も周りに合わせていたのが仇となったのだろう。
「ほんと、困るんですよねぇ~守ってもらわないとぉ」
何処か馬鹿にしてる様で、貼り紙読めないのか見えないのか?と口調と表情が物語っている。
一臣は馬鹿にされる経験が少ない上に、こういう頭の悪そうなヤツは心底癪に触る。
「おいっ、増渕。場所聞け」
一臣は両手をポケットに入れたまま顎で増渕に指示を出した。
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