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賢いし愛嬌もあるが、いかんせん値段が高すぎる。 ウン十万ともなると、一般人はなかなか手が出せないだろう。 しかもデカイから飼育環境も考えなきゃだし、声も…。 ギヤーッギヤーッギャギャッ ほら、この通り。 この声に驚いて大抵の客は、その場を離れていく。 哀れ、オーちゃん先輩。 なんて思ってたら、少年がオーちゃんのところへ寄っていった。 逆に近づく人って、珍しい。 「おーい、大きい声が出るんだねぇ」 感心したように見つめている。 「もう一回鳴いてみて?」 オーちゃんも何やら思うところがあるらしい。 黙ってその少年を観察し始めた。 鳥と喋り、鳥と意思疏通を図る謎の少年。 何なんだこの子は? 俺は不思議に思いながら、少年を見つめた。 「オーちゃんって名前なんだね。可愛いね、オーちゃん」 鳥籠脇に設置したポップを確かめて、少年が話しかける。 「オーちゃん、オーちゃん!あ、ご飯食べるの?」 先輩、困惑すると無意味にご飯食べるんだよな…。 どうやら天下無敵のオーちゃんも、この少年に計り知れない何かを感じているらしい。 「オーちゃん、本当に可愛いねぇ。でも僕の家じゃ飼えないんだよね…。残、念、…オーちゃん…」 どうやらオーちゃんに好意を持ってくれてるらしい。 良かったな、オーちゃん。 お前の事を気にしてくれる人も居るぞ。 いつも素通りされて、担当の俺位しか相手をしてないオーちゃん先輩。 俺は微笑ましく思いながらも「やべっ、品出し」と、思い出して慌ててその場を後にした。

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