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番外編『パン屋の客は嵐を呼ぶ』

※はじめての翌朝。九条が祐羽の為にパンを買いに来た時の話。 ※内容は本編無視のコメディっぽい雰囲気です。ご注意下さい。 ■■■■■ 朝6時。 おひさまベーカリーはオープンする。 某・菓子パンが活躍するお子様アニメに出てくる様な店主と弟子が早朝から頑張って焼きたてのパンを作って売っている。 種類も豊富で味も良し。 立地も都内某所の一等地である高級住宅地の目の前の場所にある為、パンに目がない人々から長年愛されていた。 「「いらっしゃいませ~!」」 レジや品出し係りを務める店主の娘と妻が元気に客を出迎える。 平日もそれなりに多いのだが、休日ということもあってか朝から客が多い。 高級住宅地と隣併せだけあって、客層もセレブを気取った女性が多く、パンの購入するだけなのに化粧に服にとお洒落を欠かさない。 手に持つバッグや財布も勿論ブランド品だ。 それは別にいいのだが、パン屋なので香水は控え目に願いたいものだ。 おひさまベーカリーがオープンして30分経過した頃だろうか。 カランカランッ 店のドアが再び入店を知らせる鐘を鳴らした。 すると一斉に店内が異様な雰囲気になった。 イケメン来た…!!! 店内の人間の脳内はこの言葉で一致した。 やって来たのは男だった。 長身の為、入り口の高さがスレスレだ。 おひさまベーカリーの入り口が低いのではなく、やって来た男が高いのだ。 シンプルなシャツとパンツ姿ではあるが顔が整っているからか、もの凄くお洒落に見えてしまう。 男は入り口近くのトングとトレーを持つと、さっそくパンを物色する為、店内の移動を始めた。 混み合ってる店内だが、男の動きに合わせて道が開けていく。 女の客達が男を意識しまくっているのが分かりやすい。 男がパンを取るのに隣に来ると息を詰めて固まるか、チラッと顔を確認し頬を染め恋する乙女の様になっているからだ。 一方の男は、非現実的な容姿のせいか正直トングが似合っていない。 迷いながらもパンをトレーに乗せていき、最後に冷蔵庫からパックのジュースを取り出した。 大きな手と長い指がジュースを取り出すだけでも絵になってしまう。 イケメンは動作も美しいとか、神様は何を思って男をこんなにも特別に作ったのだろうか。 きっとこの男を見た同じ男ならば、人生で1番不公平を感じるだろう。

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