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西からの連絡
都内の駅から近く。
その目抜通りには沢山の建物が並ぶが、そこから1本道を入った場所に建つ大きなビルが『株式会社KUJYO』だ。
KUJYOグループは経済に疎い人間はあまり知らないであろうが、仕事の内容では多岐に渡るので経済界では有名である。
関係ないだろうと思っている店や物も実は何らかの形で会社が関わっている可能性が高い。
それだけ大きな会社だった。
そんな会社を取りまとめる社長を努める九条は、連日の忙しさも見せず朝から軽快に仕事を捌いていく。
九条はパソコンでのメールチェックを終えると、漸く側で控えていた部下である眞山に視線を向けた。
それを合図に眞山は用件を切り出した。
「社長、申し訳ありません」
「何だ」
「今夜の予定ですが、業務終了後に事務所の方へお願い致します」
事務所というのは、裏の仕事の旭狼会本部の事だ。
旭狼会は九条が束ねるヤクザ組織で、関東一帯東日本を掌握しつつある大きな組織・篁組の二次団体にあたる。
しかし実質、篁組と旭狼会の実力は互角で、この界隈で九条の組は一目置かれている存在であった。
「…フウッ」
自分の様子からして何かあったとしか思えないのだろう。
九条が小さく息を吐いた。
事務所へと聞いて録な事になった試しが殆ど無いからだ。
眞山も今夜はややこしい事に時間を潰されそうだと、部下から連絡を受けた時点で思っていた。
「準備しておけ」
「はい。手配しておきます」
とは言ったものの九条は内心大きな溜め息をついているだろう。
普段は特段思わないだろうが、今日は土曜日。
九条には週末は大切にしたい事があったからだ。
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