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「あ、僕も手伝うよ!」 「月ヶ瀬」 ネットを抱えた篠崎の隣に祐羽が並んだ。 「反対側持つね」 「えっ、いいよ。重たいから」 「重たいなら一緒に持った方が軽いし」 全然ひとりでも持って行けるし、なんなら祐羽の歩幅に合わせる方が遅くなるし正直いうと運びにくい。 けれど、それを言うほどバカじゃない。 やっぱり好きな、…可愛いクラスメイトには優しくしたい。 何より、こうして一緒に何かするのは嬉しい。 「サンキュ」 「どういたしまして~だっていつも篠崎くんに助けて貰ってるしね」 ね。とか可愛いすぎる…。 歴代の彼女の可愛いさとは違う可愛いさだ。 どこか計算の働いている女子とは違う。 どうしたら可愛いく見えるか、自分に気に入って貰えるか…それが祐羽には無い。 まぁ、そりゃぁそうだよな。 俺と月ヶ瀬はただの男友達だもんな…。 月ヶ瀬のことは好きだけど、男友達の中では特別枠ってだけで女子とは違うんだよ。 もうひとつのコートの方は既に片付けが終わって、体育館から生徒が出て行く。 静かになった空間にふたり。 誰も居ない…月ヶ瀬とふたり。 「…」 「ここの上に置いたらいいのかな?」 「えっ?あ、そうだな」 他のネットも纏めて置いてある。 「よいしょっ」と祐羽がネットを持ち上げて棚に置こうとする。 背も低いし腕力も弱いので役に立っていないが、一生懸命する後ろ姿が可愛い。 篠崎は力を入れて簡単にネットを持ち上げると棚に置いた。 腕を伸ばして押し込むと、その下で祐羽が振り向いた。 「篠崎くん背が高いからいいね」 「!!」

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