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「…なんかちょっと擦ってるかも?」 「やっぱり怪我してんじゃん!!」 篠崎が慌てると祐羽は情けなく笑いながら「そうみたいだけど、ちょっとだけだよ」と、心配しないでと言う。 そうは言っても心配するに決まっている。 「今直ぐ保健室行こう!歩けないなら俺がおんぶしてやる」 「ええっ?!そんな大丈夫だよ。大したことないと思うし、歩けるし」 そうは言っても俺のせいだし…。 祐羽は怪我を疑い落ち込む自分を見てとんでもない提案をしてきた。 「じゃぁちょっと背中見てくれる?」 「えっ?!」 「なんか、そんなに言われたら少し怖くなってきたし。怪我酷かったらどうしよう…血、出てないよね?」 ええーっ!!? 篠崎は驚いて固まった。 篠崎の大袈裟な心配が続き、祐羽も不安に包まれ始めたらしい。 顔が歪んでいた。 え…マジで? 月ヶ瀬の背中を俺が見るのっ?! 今までも何度か体育の着替え等で見てきた祐羽の背中。 でも、今はここには自分と祐羽しかいないのだ。 空間にふたりきりは何故こんなにも淫靡なんだろうか。 「…」 なんか変に緊張してきた。 とっくに捨てた童貞卒業の時よりも緊張している。 男の背中。 友人の背中の傷の具合を確かめるだけだ。 それなのに、さっき不埒な行いをしようとしたせいか…懲りずに何だか気持ちが…。 「…じゃ、じゃぁ見るぞ」 「うん…お願い」 祐羽が背中を向けた。

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