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その九条の右腕で何でもそつなく熟す眞山の事も同じくそう思っている。
そんな来嶋は、頭も良く仁義を重んじる今時珍しいタイプで、かと言って現代人として世情は理解しているので頼れる男だ。
その来嶋を信頼して、表の顔を主にしている九条とその補佐で忙しい眞山に代わって、日々事務所を守っているのが、本部長兼組長代理の来嶋だった。
まだ若い来嶋で大丈夫か?という先代組員の疑念もありはしたが、それなりに実績を残していたこと、そして何よりもカリスマ性を持った九条の「来嶋に任せる」というひと言が決定を絶対的な物にしたのだった。
「来嶋さん、会長にお会いするのも久し振りですね」
「そうだな」
車を迎えに出た来嶋は、幹部組員である若頭補佐の八敷の言葉に頷くと、久し振りの再会にほんの少しではあるが緊張を覚えた。
眞山さんには定期的に会うが、会長に会うのは1ヶ月振りか?
記憶を引き出しながら、来嶋は目の前に止まった車へ視線を注いだ。
後部座席が開けられ、そこから降りて来たのはダークスーツがこれほど似合う人間は居ないだろうと、何度見てもそう思わせる男・九条だった。
「お疲れ様です!!」
来嶋がそう頭を下げると、周囲も同様に下げた。
九条は特に何も返さず開けられた玄関から建物へと入って行き、その後ろに眞山と来嶋が続き幹部が追った。
来嶋は組長代理をしてはいるが、あくまでも代理だ。
九条の辣腕振りには足元にも及ばない。
なので、一切転覆を図る気も無かった。
それが分かっているからこそ九条も本部長と兼任で来嶋に組長代理を任せている。
自分の根城である為、勝手知ったるで九条は組長専用の部屋へと当然の様に入る。
豪奢な応接セットが置かれているが、普段は使われていない。
ここで九条が仕事をすることはこうして必要な話し合いをする時だけで、来嶋は別室を使用しているからだ。
来嶋から眞山、眞山から九条へと話は行くので問題は無いが、込み入った話や事務所の引き締めも兼ねて、九条は定期的にやって来ていた。
これでは来嶋に負担が大きいのではないか?と顧問を置くことも提案された。
他の組では常識的に置いているが、九条の意向で組には顧問等は居ない。
下手に情報が漏れるのを恐れているからだ。
それを『良し』としたのは、九条が優秀なこと先代が若くして引退したとはいえ顔が広く利くこと…。
そして、日本で1・2位を争う組織・篁組の組長から目を掛けられていることが大きかった。
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