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今のところ大きな問題は何もないが、あってもどうにかなるという理由が大きい。
こうして事務所には、九条と眞山と来嶋の他に、旭狼会の幹部である若頭補佐・八敷、本部長補佐・千堂の5人が顔を揃えた。
「来嶋。今回、面倒な案件があるだろう?」
「はい。実は…、」
椅子に座った九条は背を預けると、ゆったりと足を組んだ。
それから頬杖をつく。
どう見てもその威圧感はヤクザだが、もしも違う場所ならモデルか俳優にしか見えないだろうな。
斜め横に座った来嶋は、九条を見てそう思った。
きっとこの場に居る全員が思っているだろう。
その幹部メンバーが揃ったところで九条は、定期的に行われる島のトラブルからシノギの状況や回状について改めて話を聞き、的確に指示を与えていく。
表の仕事で目を見張る程の実績を上げながらも、こうして裏の事も把握している九条に誰ひとりとして頭が上がらない。
この人は優秀だ。
頼もしい気持ちを抱きつつ、己のなけなしの劣等感を刺激する九条。
決してこの男には逆らわないし逆らえない。
近くに居る人間ほど、そう強く感じるだろう。
九条の為に、もっと旭狼会を上に引き上げようと来嶋は決意を新たにした。
そんな来嶋や組の幹部が定期連絡やその他の話に熱心に議論を交わして暫く経った頃。
静かな室内で、九条が徐に胸ポケットからスマホを取り出した。
どうやら着信の様だ。
「…」
初めは無視したが、あまりにもしつこいので画面の相手を確認してから出た。
「今、会議中だ」と、不機嫌にひと言で切る。
しかし、相手は余程なのか再び掛けてくる。
「何だ」
忌々しげにふんぞり返って九条が応答すると、周囲に控える組員にも聞こえる程の声で電話相手の声がしてくる。
どうやら男の様だ。
「…その話は明日にでも連絡する。切るぞ」
それだけ言って本当に通話を切ると胸ポケットへとしまう。
それから九条のスマホは鳴ることは無く、幹部を交えて会議が再開された。
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