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まだかな、まだかな?

・・・・・ まだ慣れない九条宅は、今夜の様に主が居ないと益々広く感じてしまう。 祐羽はスマホの画面を見て小さな小さな溜め息をひとつ小さくつくと、それからスマホをテーブルに置いた。 「九条さん、まだですかね…」 と、護衛兼世話係と称して九条が指名して終始側に居る中瀬へと声を掛けた。 週末だけの逢瀬は貴重な時間だ。 それなのに、九条の仕事でそれも削られてしまう。 仕方ないとはいえ、やっぱり会って顔を見て話もしたい。 初めての恋人という存在はまだムズムズするし、会えば少し緊張もする。 けれど九条の事は大好きで、時間をのんびり共有出来る楽しみを胸に1週間を過ごしたのだ。 それが会えないとなると、気持ちが落ちるのも仕方ないといえた。 「そう言っても仕方ないだろ?遅くなっても帰って来て貰えるんだから、そんな顔すんな」 中瀬が半分呆れた様子でそう言った。 中瀬は九条の部下で、付き合う前は祐羽の送迎係としての役割を担っていたが、今では祐羽専属の付き添い人になっていた。 こうして九条を待つ間など、家の中でも一緒だ。 初めて会った頃の中瀬は、失礼ながらどこか胡散臭いというか、のらりくらりとチャラチャラしたイメージがあった。 けれど回数を重ねて会ううちに、一気に今の様な打ち解けた年上の友人みたいな…兄の様な言動になったのだ。 中瀬曰く、祐羽が九条の恋人となりやり取りを繰り返している中で信用に値すると判断したという事らしい。 どうやらこっちが素の様だった。 祐羽としても、九条が居ない間自分に付き合ってくれる人間がよそよそしいよりも、こうして気軽に素で対応してくれる方が居心地も良い。 そして、ひとりっ子の祐羽はまるでお兄さんが出来たかの様で内心嬉しかったりした。 「ほら、どれ頼むんだ?会長が帰ってきた時に元気ないとダメだろ?飯食っとこうぜ」 そう言いながら中瀬にピザ屋のホームページを見せられた。

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