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そうして入った店は、雑貨が揃った店だ。 女子率が高いが、カップルだったり男もそれなりに居る。 ひとりで居る男は彼女へのプレゼントでも選んでいるのだろうか。 そんな場所で同じように見繕っている自分は、決して仲間ではない。 あくまでも仕事なのだ。 「おっ、ついでに買っとくか。使うよな」 パジャマコーナーへ向かう途中にあったのは、歯ブラシとコップ、タオルがセットになったものだ。 水色メインのパステルカラーが優しい雨粒がデザインされている。 値段もお手頃。 さっきのブランドショップと雲泥の差ではあるが、祐羽にも気が抜けるポイントも必要だろう。 それから込み合う店内を進んで、お目当てのコーナーへと辿り着いた。 「パジャマ安くてアイツに合いそうなの無いかなぁ~?」 パジャマもブランドがいいのか?とも思ったが、野暮ったいデザインしかないのでここで調達する。 …どうせ脱がされるだろうし。 シンプル・イズ・ベストだとおもいつつも可愛らしい雑貨屋で男物となると数は極端に少ない。 おまけに味気ない普通のデザインしかなくて、色もブラック、ロイヤルブルー、グレー、ベージュと寂しい。 可愛いかと思われたパジャマもやたらめったら柄があり、目がチカチカしてしまう。 これでは脳が休まらないうえに九条も眉間に皺を寄せそうだ。 夜、泊まったら絶対にそういう展開になるよな…。 会長がムラムラする様なヤツがいいよな、きっと。 「……なんで俺が…」 ふたりの夜の営みの心配をしなくてはならない事に、思わず溜め息を溢した中瀬だった。 取り敢えず着替えもいるだろうと考えて、触った感触が気持ちいいロイヤルブルーの物を手に取った。 籠に入れて別の店に行ってみるかと踵を返した中瀬の目に、とんでもない物が飛び込んできた。 「えっ、ちょ、マジで?!」 思わずそちらへ足を向けて、お目当ての物を手にした。

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