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それから祐羽の動きを見守りながら、つい眞山に視線を向けてしまった。 慌てて直ぐに元へと戻すが、気持ちは戻らない。 いや。眞山さんはノーマルだし…何を考えてるんだ俺…。 少し意識をアチラに向けていた中瀬は、ハッと我に返る。 やべっ!アイツは…?! 祐羽は未だ慎重に、けれど早く着替えなければと真剣に移動をしていた。 さっきよりもコツを掴んだのか、少し早く歩けているが少し笑える動きだ。 この空間で祐羽の周りだけが異世界の様だった。 中瀬は(なんか平和だ…)と、普段の殺伐とした空気とはえらい違いに呆気に取られてペンギンの様にちまちまと移動する祐羽を一瞬ぼんやり見つめたのだった。 それから、別室にて着替えを済ませた祐羽を披露すると、九条もどこか機嫌がよさそうだ。(表情は特に変わらないから確信は無いが。たぶん喜んでると思う) コーディネートは合格点を貰えたらしい。 こいつには、俺達の心の安寧の為にも会長の恋人として頑張って貰いたいな。 まだ恋人ですらないのに、勘違いの思惑を抱く中瀬なのであった。 ~おまけ~ 未来のとある週末。 風呂に入ろうと、自分に用意されていたクローゼットの引き出しから出したパジャマを手にした祐羽は目を丸くした。 「えっ?何これ…これ本当にパジャマ?!」 そのパジャマはモコモコで、広げてみるとウサギの耳が付いていたのだ。 九条さん…こういうの、好きなんだ…。 「………」 九条の趣味について、誤解を生んだ夜となる。 まぁ、いいか。 男の僕が着るのは何か変かもだけど、モコモコが気持ちいいし可愛いし。 「!?」 祐羽がパジャマを着てリビングに現れると、そのモコモコな姿に驚いた九条。(表情には殆ど出さないが) まさかそんなパジャマが用意されているとは、眞山達に任せていただけに知らなかったのである。 「僕が着ると変かもですけど、モコモコしてて気持ちいいんですよ。触ってみますか?」 うさ耳パジャマは全くもって趣味ではないが…。 「フンッ。触ってやってもいい。早く来い」 祐羽が身につければ何でも最高評価になる案外単純な男・九条であった。

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