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8・おまけ
バイト最後の日の終了時間ギリギリには鳥海がやって来て、コーヒーを一杯。
一臣のバイト姿を面白そうにニヤニヤ笑って楽しんでいた。
そしてギャルソン一臣と記念のツーショットを無理矢理撮って、ご満悦の笑顔だった。
「おっ、いい感じに撮れたんじゃね?見てみろよ」
「見ねぇよ。閉店するからお前はさっさと帰れ」
「え~、残念。まぁいいや。ごちそうさま」
挨拶を終えて鳥海は店を出た。
一臣は不機嫌めブスッとした顔で写っていたが、誰がどう見てもイケメンには変わりない。
バイトに受かるのも簡単、仕事も簡単に熟して、女性客どころかバイト仲間も惚れさせて…
どこの世界の話だ?
マンガの世界かよ?
(やっぱイケメンは得だな…)と自分のことは棚に上げて感嘆する鳥海なのであった。
・・・・・・
~おまけ~
帰宅した九条は、テーブルの上に見覚えのある冊子を見つけて動きが止まった。
「…」
九条の後ろからひょこっと顔を出した祐羽は、あぁと頷いた。
「これ、バイト情報が色々載ってるんです」
「それは知っている」
九条の質問の意図が分からず、祐羽は首を傾げた。
「誰がバイトするんだ?」
「え、…僕ですけど…?」
「…」
「今考えているのは、このバイトなんですけど」
ちょっと嬉しそうにトントンワークを手にして祐羽が広げて見せる。
そこには『楽しい仲間が待ってるよ!』『バイト初心者にも安心。先輩が優しく丁寧に教えます』という文字と共に若い男女が身を寄せあって笑顔でピースしている。
そして《居酒屋・にゃん太郎》という文字が…。
「夕方からの短時間でしようかと思っ、」
嬉々として説明し始めると、直ぐ様九条が祐羽の手からトントンワークを鷲づかみ取り上げ、丸めてゴミ箱へ容赦なくポイとした。
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