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「はぁ~良かったぁ…。これで大丈夫だ」 「何をしてる」 「わあっ!!?」 いきなり声を掛けられて心臓が飛び出そうなほどに驚いた祐羽は、よく知る声に振り返った。 見上げる彼方上には待ち望んでいた姿があった。 「あ、れ?…九条さん、どうして?」 どうしてここに居るの?! 今日も夜遅くまでお仕事って言ってたはずなのに…。 「本題は昨日で終わってる。だから今日は早目に出てきた」 「そうなんですか」 そう言って立ち上がった祐羽はギョッとする。 眞山が側で九条に傘を差し掛けており、肩が雨に濡れているではないか。 「ま、眞山さん…!濡れて、」 「気にしなくていいですよ」 眞山は何でもない様に言うが、気にするなとは無理な話だ。 とはいえ、これは仕事なのだろうし眞山自身がやることに意味があるのだろう。 祐羽は良いことを思いついた。 「九条さん、僕の傘に一緒に入りませんか?」 これなら眞山は濡れないし、九条と一緒に並んで歩けるので一石二鳥だ。 前に使っていた傘は愛着があったが、残念なことに骨が折れてしまった。 そこで新しく買う時に、せっかくならと少し傘が大きめの物にしたのだ。 これで濡れる可能性も前より少ない。 そして、今回その意義があったというものだ。 九条が穏やかな顔で手を伸ばしてくると、祐羽から傘を奪う。 それから同じ傘の中へ収まった。 なんだか一緒が照れ臭い。 祐羽は思わずフフっと笑った。

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