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これって所謂、相合い傘ってやつだよね。 それを九条とする日が来るとは…。 思いもしなかった、嬉しい出来事になった。 「ところで何をしていた。お前が何かしているのは車から見ていたが」 「ええっ?!いつから見てたんですか…!?」 全く車の存在に気がつかなかった。 雨の音や景色に気を取られ過ぎたのかもしれない。 「帰り道から近いからな。お前の家に直接来たら、家を出る姿を見た」 ということは始めからという事だ。 「すぐに声を掛けてくれて良かったんですけど」 「そうは思ったが、お前の普段の様子を見てみたくてな」 「ええっ?!」 「何やら楽しそうに歩いているから眺めていた」 「!!」 ということは全て見られていたという事らしい。 は、恥ずかしい~。 「それよりも、これからどこへ行く予定だ?」 「う。近くのコンビニにお菓子を買いに行こうと思って…」 「近いのか?」 「はい。直ぐそこを曲がって少しのところに」 祐羽が指を指して示すと、九条が頷いた。 「なら付き合おう」 「では車を、」 そう言った眞山を制止する。 「たまに歩くのもいいだろう」 「えっ、いいんですか?!」 まさかのコンビニまで歩いて行くという九条に驚く。 「お前と雨の中をのんびり歩くのも悪くない」 そう言って体を屈めて来た九条の唇が祐羽の髪の毛に落とされた。 小さなキスの音は雨の音に吸い込まれていった。

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