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番外編『雷パニック』
※ちょっと、本編ふたりの仲が進んだとある梅雨の日の話。
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ピカッ!
「ひっ!?」
ゴロゴロゴロゴロ…ドーンッ!
「…どうした」
ダイニングテーブルで呑気におやつの団子を食べていたかと思うと、祐羽が小さく悲鳴を上げた。
それから慌ててソファに座る九条の元へと走り寄って来た。
ピョンとソファに飛び乗ると丸くなり体を自分に預けてくる。
必死に自分の服を掴んでいる小さな手が可愛い。
「どうしたじゃないですよ、って、ひぁっ!!!」
外で再び光ったかと思うと荒々しい音が轟いた。
可愛い恋人は、どうやら雷が怖いらしい。
すっかり顔を隠して、なんとか逃れようとしているらしく九条の腕の間に無理矢理頭を突っ込んでいる。
頭隠して尻隠さずとはよく言ったものだ。
「おい。ここは避雷針がある。そこらの木の下とは違うんだ。万が一にも落ちない」
「…ほ、本当ですか?」
「本当だ」
「信じますよ?」
「信じろ」
九条はこんな事で嘘をつかない。
それを知っている祐羽はビクビクしつつも顔を出した。
すっかり疲れた顔。
さっきまで幸せそうに団子を食べていた時とはえらい違いだ。
唇に甘いタレが付いているのがなんとも愛らしく笑いを誘う。
恋人という欲目だろうか。
…いや。普通に誰が見ても可愛いと言うだろう。
恋人だけ特別フィルターが掛かっている九条だが、誰も彼の脳内を見ることは出来ない。
だから、クールな顔をしていてもこうして考えることは意外にも普通の男と変わらない時もあるのだ。
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