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そんなことは決してない。
「僕はお父さんお母さんと一緒に旅行するの好きだよ。楽しいし、また行きたい!」
「祐~羽~!!」
「でも、今回の旅行も同じくらいに楽しみなんだ。それに中瀬さんと九条さんが一緒に行くから大丈夫だよ。それにね、お父さん。旅行の提案して案内してくれる九条さんなんだけど、本当に頭も良くて素敵な人なんだよ~。そう言えばこの前もね、」
ここで九条の株を上げておこうと祐羽は九条のカッコイイと思えるエピソードを披露してみせた。
えへへと照れながら言葉を紡ぐ祐羽に、亮介は眉をギンッと吊り上げた。
目つきも淀む。
何か不思議な違和感を感じた亮介は、腕を組んで息子を見た。
「中瀬さんはともかく、その九条さんとかいう人…信用できるんだろうな…?」
「お父さん、失礼でしょう?!挨拶して下さった中瀬さんの親戚の方よ。いつも祐羽に勉強教えて下さってる…」
香織が亮介をムムッと睨む。
実は口実なので殆ど家庭教師の真似事はしていないが、少し教えてくれるだけでも頭の出来があまり優秀でない祐羽にも不思議と理解出来るという…九条は教え方も上手い。
お陰で数学の基礎なら出来る様になり、祐羽はテストで赤点ギリギリ回避して生きていた。
「確かに祐羽の教えて貰っている数学は成績ミクロだけ上がった様だが…」
ミクロって…酷いよ、お父さん…。
「そうでしょう?!それに聞いたら卒業した大学は天下の帝都大で、しかもその頃に会社を興したそうよ!!それが今かなり大きな会社なんでしょ、祐羽?!」
香織が鼻息荒くルンルンで伝えている。
ステータスだけでこれだけ夢見る乙女になっているのだから、実際の九条に会ったら卒倒するのではないだろうかと祐羽は一抹の不安を覚えた。
「それも本当か?確かに中瀬さんは高級車に乗ってたが…それに、その九条さんって人がお前を送迎してくれる車も何度か見たが確かに高級車だったな…」
それは日曜の夕方、祐羽を自宅まで送ってくれる運転手付き高級車の事だ。
毎回中瀬の父親役の組員が送迎だと、どれだけ暇なんだ?となってしまうので最近は殆ど九条の運転手付きの車で中瀬が付き添っての送迎だった。
「いや。だからと言って中瀬さんには失礼だが、その九条さんとかいう人は本当に信用していいのか?第一、毎週末に家庭教師とか…大の男がそんな暇なことを…」
疑いは晴れないままだ。
祐羽はむうっと頬を膨らませると、立ち上がった。
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