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それから九条に椅子へと戻された祐羽は「お待たせして、すみません」と頭を下げた。 そこを九条が「独り身が寂しい男の嫉妬か?」と意地の悪いことを言うものだから、紫藤と一触即発の嫌味合戦になりかけた。 しかし、外崎の「隆成さん。お時間が…」とい言葉で停戦となり、祐羽はホッとするのだった。 「律、飯だ飯~!」 「はいっ、直ぐに。すみません。お料理お願いします」 外崎から店員に声がかけられると、次々と料理が運ばれて来てあっという間にテーブルの上には湯気の立つ美味しそうな料理が所狭しと並べられた。 美味しそうだけど、凄い量…。 あまりの量に圧倒される祐羽に「遠慮なくドンドン食え!」と紫藤が早々に乾杯を告げた。 はじめは緊張して喉も通らないかと心配した食事も、紫藤の明るく人懐っこい性格に助けられて普通に食べることが出来た。 とても美味しく、食べる箸が止まらない。 「どうだ?旨いか」 「はいっ、とても美味しいです」 「ならいい。酒は…まだ未成年だったな。飲ませちゃ駄目か」 紫藤から酒を勧められそうになるが、未成年の自分は飲めない。 美味しそうに飲む姿に、味が気になるところだ。 「大人だったとしても勝手にコイツに飲ませるな」 そんな祐羽の思考を絶ち切るかの如く、九条が直ぐ様紫藤に鋭い言葉を投げ掛けた。 「誰も酔っ払ったからって、お前の恋人を襲ったりしねぇよ」 「とにかく、コイツには用もなく絡むな触るな」 「おいおいおいっ!お前がまさかの独占欲か~?面白いな!!」 紫藤が涙を流しそうな勢いで笑う。 九条さんが…独占欲…?本当に? それだけ好きな気持ちを自分に対して持ってくれているなら本当に嬉しい。 祐羽が九条を見ると苦虫を噛み潰した様子でグラスの酒を飲んでいた。

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