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どうしよう…と途方に暮れる祐羽に九条が視線を寄越した。 小さくビクッとしてしまうのは、九条と恋人になったとはいえまだ1年も過ごしていないのだから怖いと思うこともある。 例えばこうして感情の読めない九条が、明らかに機嫌を損ねていると感じ取れる時だ。 こんな九条さん、付き合いだしてから初めてかも。 何が原因か分かれば、対応の仕方もある。 けれど、全くその理由に思い当たらず困ってしまう。 とにかく何か分かるかもと、祐羽は九条の視線を受け止めていた。 「祐羽」 「!…はいっ!!」 名前を呼ばれて祐羽は嬉しくなって返事をする。 そんな祐羽とは裏腹に、やはり九条の表情は厳しい。 「こっちへ来い」 素直に九条の前に立つ。 まるで先生に叱られる生徒の様だ。 「お前は誰の恋人やってるんだ」 投げつけられた質問に首を傾げる。 「誰のって…九条さんの恋人、です」 「そうだろう。それなのにさっきのは何だ」 「はい?」 さっきのとは何のことだろう? 「チッ…ボケた顔しやがって」 「わあっ!!」 そう言ったと同時に腕を引かれ次には逞しい胸に抱き締められていた。 な、何?!急に、九条さんどうしたの?!! 訳もわからずプチ混乱に陥った祐羽だったが、九条に「この犬ッコロめ」とボソッと呟くと共に頭にキスを落とされては大人しくなるしかなかった。 はぁ…と九条が疲れた様な溜め息をついた。 九条さんどうしたのかな?疲れてる? 祐羽は取り敢えず黙って九条の胸元ですっぽり収まっておくことにした。

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