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暫くそのままで黙っていると九条が再び小さく息を吐き、それから祐羽を抱き直す。
膝の上で向き合う形だ。
普段隣に座ったりはあっても、この姿勢は無いので照れ臭い。
祐羽は頬を染めて九条の胸元に視線を落とす。
なんだか口元もモゾモゾするので、早く何か言って欲しい。
「…」
「…」
「……」
何か言って欲しいんですけど…。
九条さん?
「え~っと?九条さん?」
「喋るな」
「!!」
祐羽はビクッと体を震わせると、慌てて口元を両手で覆う。
喋ったら駄目。
「違う。そうじゃない」
「?」
「隆盛と話しすぎだ」
は?
祐羽は何を言われているのかと顔を上げ、九条を見た。
「あとは、ヤツの顔を見すぎだ」
え?
「そんなことは無いと思いますけど…」
「…お前と隆盛はもう会わせない」
「えっ!?そんな…っ!」
紫藤は話題豊富で話し易かったので、もっと話しをして話術をコッソリ学ぼうと思っていたのに…と祐羽がガッカリした顔を九条に見せてしまった。
「あ゛?」
「ヒィ…!!」
そのせいで、九条の顔の不機嫌さが一気に増した。
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