645 / 1012
9
腕、掴まるか?…腕、…えっ?えっ?
それって腕を組むかってこと?
まさかの九条からの提案。
腕を組んだことはもちろんある。
もちろんあるのだが…。
祐羽の頭には、自分が九条の腕に腕を絡ませて並んで歩く姿。
それを後ろの組員達がニヤニヤ笑って見つめるている…それを想像して心の中で全力で首を振って否定した。
ムリムリムリ!!
恥ずかしくて無理だよ!!
こんなにたくさんの人、そして組員の前で腕を組んで歩くなんてハードルが高すぎる。
自然と組んでいましたならいいが、提案されると恥ずかしすぎる。
祐羽はカーッと顔を赤らめた。
それから、まともに九条を見ることができず視線をゆっくりと逸らした。
その先には鹿。
鹿…。そうだ。話題変えちゃおう。そうしよう。
「あっ!九条さん、見てください。鹿ですよ!!」
恥ずかしさを誤魔化す為に、祐羽は九条の隣から逃げ出した。
「逃げたか」
そう面白そうに呟く九条に気がつかないまま、祐羽はさっそく鹿に手を伸ばしていた。
「あ~もう、不意打ちで九条さんってば…心臓に悪すぎるよ。ね、鹿さん」
嫌がられるかと思った鹿だが意外と人懐っこい。
鹿の頭をよしよししながら、祐羽が訴えると、鹿も返事をする様に頷いた。
「やっぱり?いつも九条さんはそうなんだ。僕の気持ち分かってくれる?」
鹿が祐羽の顔を見て頭をウンウンさせた。
ともだちにシェアしよう!