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男子高校生に色気は正直無いが、愛玩的な可愛さと自分たちを思っての優しさに「う」と声を組員たちは漏らした。
それを見た中瀬は「はぁ~…」と溜め息を溢した。
「…苦労するな」
柳が呆れた様子で言うと、中瀬がジロッと見た。
「最近は慣れてきました…。こんなの日常ですよ、日常!この前なんて、」
中瀬が日頃の苦労話を柳に披露する一方、祐羽にキラキラした視線を向けられた組員たちは戸惑っていた。
基本的に警護として着いているのだから、呑気に食べるなんてとんでもない話だ。
「祐羽さんの護衛に来ていますので」
「会長の許可が無いので、すいません」
組員が頭を下げた。
「許可が要るんですか?」
「そうです。なので私たちの事は気にせず飯食ってください」
これで諦めてくれ、と組員たちは祈った。
「そうなんですね…」
祐羽が困った顔をして、それからうーんと考える仕草をする。
ここに九条さんは居ないから気にしなくてもいいのになぁ。
あっ、そうだ!
祐羽はナイスアイデアだとスマホを取り出すと、ポチポチする。
「おい。もういいだろう?早く食べようぜ」
中瀬が声を掛けてくるが、祐羽はスマホに夢中だ。
「ちょっと待ってください」
「お前なぁ~、…って何してるんだよ?」
苦労話が一段落した中瀬が、これから食事というタイミングで祐羽がスマホを弄っていることき気づき注意する。
それに祐羽は何気ない様子で答えた。
「九条さんにリャイン送ったんです」
「は?」
「組員さんも一緒に皆でご飯食べてもいいですか?って聞いてみました」
その返事に、室内は凍りついたのだった。
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