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九条からの了承を得てすっかり気が楽になった祐羽とは違い、他のメンバーは若干憂鬱を背負った夕食会が始まった。 とはいえメニューを開けば気持ちも浮上するが、コース料理しかない恐ろしさに再度祐羽を含めた全員で震えた。 しかし今更引けないし、祐羽の付き添いなのだから九条も怒りはしないだろうと覚悟を決めた。 既に怒っているが、それは料理の値段ではない。 そこは後で祐羽にアフターフォローを任せるしかなかった。 会話を楽しみつつ美味しい料理に舌鼓を打っていた祐羽だったが、冷房がよく効かせてあった為かトイレに行きたくなってきた。 マナー的によろしくないと分かってはいるが、こればかりは生理現象なのでどうにもならない。 我慢していては美味しい料理の味も分からなくなる。 そこで祐羽は断りを入れた。 「すみません。ちょっと御手洗いに…」 「ん?じゃぁ着いて行く」 「えっ、いえっ。いいです!そんな着いて来て貰うなんて悪いです!」 トイレに行く気持ちも無い人間にわざわざ着いて来て貰うのは申し訳ない。 ましてや子どもではないのだから、ひとりでトイレくらい行ける。 それに中瀬はメインの途中だ。 「中瀬さん、食べてる途中ですし」 「それじゃぁ私が付き添います」 そこに手を上げたのは組員のひとり、白田だった。 「ちょうど食べ終わりましたし、入り口の側なので出やすいですから」 「いや、でも」 「俺たちはお前のことを会長から任されてるんだ。付き添うのは当然だろ」 それを言われては何も返せない。 九条はそういう立場に居る人間なのだから。 「…それじゃぁ、すみません。お願いします」 祐羽が申し訳なく頭を下げると、白田はその顔に優しい表情を浮かべた。

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