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個室を出た祐羽は、白田と並んで歩きながら再度頭を下げた。
「着いて来て貰って本当にすみません」
「いえ。仕事なんで…とはいえ、これはお礼とでも思ってください」
「お礼?」
白田の言葉の意味が分からず、祐羽が聞き返す。
「ええ。普段なら絶対に食べられない高級な店で飯を食えるんですから」
警護と称して着いている数名の組員の中でも1番体格がガッチリしている上、怖そうな雰囲気を持っていた白田に正直ちょっと腰の引けていた祐羽。
ところが、食事が始まり顔は覚えても名前を知らないので改めて自己紹介して貰うと、思ったりより優しい顔を見せてくれた。
会話を振れば気さくに対応してくれて、逆に楽しませようとしてくれる。
特に白田は祐羽からすれば随分と大人だが、話しもしやすい。
そんな白田始め、組員たちに祐羽は少しずつだが短時間で随分と馴染んでいた。
「それも会長から許可を頂けて…奢られたなんて、他の組員に自慢できますんで」
白田が面白おかしく言ってみせる。
「あははっ、自慢…ふふっ。さっきから思っていたんですけど白田さんって面白いんですね」
我慢できなくて最後にクスッと笑って、祐羽は白田を見上げた。
「!!…いえ、別に面白くは…っ」
「?」
白田が口ごもる。
「これか…会長を落としたテクニックは…無自覚とか質が悪くないか?」
「ん?白田さん、今何か言いました?」
顔を背けた白田を不思議に思い様子を伺ってみれば、ちょうど背後を客が通り過ぎぶつかりそうになる。
それを避けた祐羽は白田にぶつかってしまった。
「わっ、っとと…!」
ぶ厚い胸板に頬っぺからぶつかると、バランスを崩す前に白田に肩を抱かれて何とか踏み留まる。
「ありがとうございます。すみませんっ」
「う…細っ」
男子高校生の物とは思えない予想外の細さに白田が思わずそう漏らす。
祐羽が間近で顔をつき合わせ謝ると、白田は気にするなと言って慌てて引き離し再びトイレへ向かった。
それに祐羽が並んで歩く。
「勘弁してくれ」
白田は口の中でボソッと呟きながら祐羽の旋毛を見下ろした。
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