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「待ってください!…外崎さんも中瀬さんも悪くないです。僕こそ何も出来なくて…」 そこまで言ってから言葉に詰まった。 本当に自分は何も出来なかったどころか、男の機嫌を損ねるだけの存在でふたりに余計な迷惑を掛けてしまっている。 もう迷惑をかけたくないという思いとは裏腹に、男からの暴言と暴力で心は弱りきってた。 「祐羽…」 「祐羽くん…」 祐羽の胸の内が理解出来るだけに、中瀬と外崎も胸が張り裂けそうになり、自然と3人で抱き締めあった。 本当は不安で叫びたくて走り出して、そして泣きたいのは皆同じだろう。 しかし今はそんなことは出来るはずもなく、お互いを庇いあう。 たったそれだけで不思議と心は自然と落ち着いてゆき、何とかしようという気持ちが3人に湧き出てきた。 暫くして漸く気持ちを立て直した三人は顔を付き合わせて、これからのことに頭を捻っていた。 祐羽はまだ正直言うと、ヤクザの対立という普通では有り得ない事件に巻き込まれ加えて拉致監禁と心身共に辛かったが、ふたりの気持ちを削いではいけないと平静を装って頑張る。 泣いたらダメだ。 逃げることを一緒に考えないと。 ここで自分がいつまでもメソメソしていては、迷惑を掛けるだけだ。 そう言い聞かせながら祐羽は連れ去られた時のことを思い出した。 持っていた三人の荷物は乗せられたと同時に車外へと捨てられて、九条達への連絡手段は無い。 柳や他の組員は大丈夫なのだろうか。 無事ならば自分達のことを伝えてくれただろうが、それも定かではない。 「それにしても随分山奥ですね。見た感じは保養所の様な…それとも家具を見る限り別荘ですかね」 外崎に言われて改めて室内を見ると、建物自体は比較的大きい作りで家具も高そうな物が揃っているが、どこか年季を感じる。 「普段は使ってない場所みたいだ。というか、当分、か…。」 中瀬が近くの棚の上の埃を指に取り、時の止まったカレンダーに視線を向けた。 数年前でカレンダーは捲られていないのを確認する。 「カーテンで目隠しされてたけどあの場所からして体感的に時間は市内からだいたい一時間ちょっとの山だと思う。それに車外に出た時にチラッと見たけど、道路の作りや大きさからしてそんなに山奥という訳じゃなさそうだった」 中瀬が少し考えながら色々と考えを上げていった。

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