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車を走らせて二十分程して着いた場所は紫藤組の事務所兼住宅だった。 周囲は普通の住宅街で、事務所もモダンな和風建築の大きな建物だが知らない一般人なら組事務所とは思いもしないだろう。 しかしよく見れば門構え、高い塀に多数の防犯カメラと入り口にジャージ姿の厳つい男がふたり立っている。 開いた門から車が入り、ふたりは降り立つと無言で入っていく。 連絡を受けていたのか組員が「事務所の方へ」と声を掛ける。 九条と紫藤の圧力に誰も声を出せない。 組事務所へ入るとそこには九条と紫藤の部下が直立不動で立っていた。 「「「申し訳ございませんでした!!!」」」 柳、白田をはじめ全員が土下座をして謝罪を述べる。 しかし、九条と紫藤は黙ったままだ。 九条と紫藤のふたりがソファへ腰を下ろすと、すかさず他の組員からコーヒーが二杯用意され眞山がそれをテーブルへと置いた。 九条はソファに寄りかかり胸元からタバコを取り出す。 眞山が直ぐに膝をつき火をつけた。 煙を燻らせる九条だが、タバコを吸ったのは数ヶ月振りになる。 祐羽と関わりあい始めて以降、一切吸うのを見ていなかった眞山は余計に胃がキリキリと痛むのを感じていた。 恐ろしい程の沈黙が落ちてきて、漸く紫藤が立ち上がると近づいて部下の目の前でしゃがんだ。 そして胸ぐらを掴むと 「謝罪で済むとか思っとんのか、あ?」 その言葉と共に頬を思い切り殴られる。 部下ふたりはその場に倒れ呻き声を漏らして、それでも何とか起き上がって土下座をした。 頬は赤く腫れ、唇から血は出て痛々しい。 柳達も九条が生易しいとは思っておらず、自分達の番を待っていた。 味方としてはこの上ないボスだが、敵になればこれほど恐ろしい存在は無い。 タバコを眞山の差し出した灰皿で潰すと、溜め息を吐いた九条があっという間に柳達の前にやって来た。 瞬間、柳は吹っ飛んでいた。 白田達も次々と横っ腹を蹴り飛ばされ、悶絶する。 一瞬息が止まり、次に激痛が襲って来た。 しかし、少しすると柳達は何とか頭を床に擦り付けていた。 これくらいで済ませて貰えた事に感謝しかない。

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