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九条が本気を出して蹴っていれば骨が折れ、内臓も無事ではなかっただろう。 心底惚れたボスだからこそ、紫藤組、旭狼会の組員はこれくらいで心が離れることはない。 この汚名を返上する為に尽力するのみ。 「報告しろ」 九条の指示に、柳は痛む腹を押さえながら口を開いた。 山中にある建物の一室でソファに座って外崎と寄り添いながら、祐羽は中瀬の様子を心配そうに見つめていた。 中瀬によると、ここは道路側から入って直ぐに駐車場が設けられており、そこには車が六台ほどが停められる広さがあるらしい。 建物は道路に向かって前を向いく形で建っており、三角屋根で二階が狭く平屋に近い造りをしているとのことだ。 玄関から入って廊下が伸びており、右側にリビングがあって、主にそこに男達が居る。 車に居たボスらしい男と、暴力を奮った加藤と三浦に運転手係、他に元からここに待機していた男が三人で、全員で七人居る。 そのうちの一人が今この部屋の監視役をしているということだ。 その隣に納戸らしい物があり、その横が今祐羽達が監禁されている部屋の配置らしい。 ここへ連れて来られる迄にそれだけの事を記憶する中瀬の能力に驚かされると共に、自分の役立たずっぷりに落ち込むしかない。 そんな有能な中瀬はというと、ドアに手を当てそこに耳を重ねると外の音を拾っていた。 聞き耳を立てる中瀬に、いつ監視役にバレてしまわないかとハラハラしてしまう。 そんな祐羽に比べ外崎も静かに集中している様子で、肝が座っていると感心した。 その姿に、全くの一般人である自分との違いをまざまざと思い知らされてしまう。 さすがに拉致監禁をされて二人も不安で怖い思いをしているだろうことは理解出来るが、それでも強く前を向いて打開しようとする姿に強く頑張ろうという気持ちにさせて貰える気がした。 「…どう?」 「さすがにリビングまで少し距離があるから、ハッキリとは聴こえないですね。笑い声がするので、余裕ぶってるのは分かります」 「私たちのことを知ってて連れて来たからには隆成さん達に要求なり何なり入れたと思うんだけど…。それともまだなのかな?」 「外崎さん。今紫藤組で争ってることとか、利権の関連で何ありますか?」 「そ、れは…」 「?」 ぎこちなく自分を見てきた外崎に祐羽は不思議そうに見つめ返していた。

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