730 / 1012

8

動揺と混乱で回らなかった頭が、外崎のいつにない剣幕で冷静を取り戻していった。 「とはいっても、外の様子が分からないとどうにも…。きっと中瀬くんや僕達が殺されることは本当に無いと思う。といっても気は抜いちゃダメだからね。流れ弾とかあるし。それに、今の感じだと組に帰して貰えるとは…限らないから」 「…はい」 「祐羽くんは一般人だから大丈夫だよ。それに、いざとなったら僕が絶対に守るからね!」 「僕も外崎さんを守ります!」 「ありがとう。でも僕のことよりまずは自分ののことを優先させてね」 そんな外崎に祐羽が「あ」と気づく。 「外崎さん、僕って言うんですね」 それを指摘された外崎がフフッと笑った。 「プライベートでは普通に『僕』って言ってるんだけど、仕事の時は隆成さんの秘書をしているからね。ビジネスでは『私』って言ってるよ」 「そうなんですね」 「うん。…早く隆成さんの秘書が出来る、側に居られる日常に戻りたいよ」 「外崎さん…」 憂いを帯びた外崎は本当に切なくて、祐羽も九条を思い出し胸がきゅうっと締め付けられる。 絶対に九条さんに会うんだ。 諦めたりしない…! そう祐羽が気持ちを再確認している時だった。 何やら騒がしいかと思えば、次に外から車のエンジン音が聴こえてきた。 「どこかに行くのかな?」 外崎が神妙な顔つきで窓辺に寄ると、少し開けて聞き耳を立てる。 その側に寄った祐羽も同じように外の様子を伺う。 「二台、出るみたいですね」 一台のエンジン音に加えて、新しく違う音が重なったのが分かった。

ともだちにシェアしよう!