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「もしかして隆成さん達との交渉に関係するのかな…」
「そうかも?!」
「二台出るってことは、向こうで何人か乗せるのか…それともここから大人数で出るのかも?」
外崎が考えながら、ぽつぽつと意見を発する。
その発言で、祐羽はこの事件が大きく動き始めたことに気がついた。
これで交渉が上手くいったら、僕達は九条さん達のところへ帰れるんだ!
祐羽は一気に明るい気持ちを取り戻し、少し目を潤ませた。
楽しい旅行から一転、恐ろしいことに巻き込まれ、一時は全てを諦めたくなった。
けれど中瀬と外崎に励まされ、九条に会いたい帰りたいという思いで、なんとか踏ん張れていたのだ。
あと少しで三人で一緒に帰れるんだと思うと祐羽は嬉しさに思わず口元を緩めた。
「車、出て行ったみたいだよ」
車の走り出した音から次第に小さくなっていく音になり、辺りがまた静かになった。
外崎が窓を閉めゆっくりとソファに座ると、祐羽も隣に座った。
ペットボトルのお茶をひと口飲んだ外崎がボソッと溢した。
「もしかしたら中瀬くんが連れて行かれたかも」
「えっ?!」
「二台も出るなんて大がかりな何かが起きるとしか思えないし、中瀬くんが戻って来ない。それに中瀬くんは九条さんの恋人と思われていたから、交渉の為に連れて行かれたとしか」
「あ…」
それで中瀬が連れて行かれたのだと、今さらになって祐羽は気がつき顔面を白くさせた。
「僕のせいで…」
「祐羽くん、あまり気にしないで。中瀬くんも分かってて否定しなかったんだから。万が一があっても君には対処しきれなかったでしょう?」
そう言われて、祐羽は悲しいかな頷くしかなかった。
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