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それに祐羽も慌てて足を動かし着いて行く。
「万が一のときは僕が全力で守るから、祐羽くんは何とかして絶対に逃げてね」
「外崎さん、僕も、」
祐羽が自分も外崎を守ると、そう言いかけた時だった。
「はいっ、捕まえたぁ~」
加藤が心底楽しそうな声でふたりの目の前を遮った。
とうとう部屋の一番隅に追いやられてしまった外崎と祐羽は、お互いを庇う様に抱きあい一歩、二歩下がった。
そんなふたりの様子に加藤がうっすら笑う。
「そうして見ると仲のいい兄弟みてぇじゃねえか。お互いを庇ってるのか?泣けるな~おい」
ちっとも泣かない男が嘘を平気で口にする。
いつの間にか加藤の後ろへ来ていた男も興味津々に祐羽と外崎を交互に見ていた。
普段はノーマルだろう男も加藤の影響を受けたのか、目つきが少しだが欲の光を湛えているのは気のせいじゃないだろう。
祐羽はそんな男を見たくなくて視線を外すと、タイミングを図ったかの様に加藤が話し掛けてきた。
「おいボウズ」
それはきっと自分のことに間違いないだろうと、祐羽は嫌々ながらも加藤に目を向けた。
「お前、昨日のこと忘れてねぇだろうなぁ?ん?」
そう言われて、祐羽は動揺に大きく肩を揺らした。
忘れたくても忘れられない昨夜のトイレでの出来事だ。
あの気持ちの悪い加藤の顔と息づかい、そして下半身の感触。
嫌だ、嫌だ絶対に!またあんな事をされるなんて…!
思い出した途端に外崎へ強く強く抱きつきながら、それでも抵抗を示す様、懸命に加藤を睨んだ。
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