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「祐羽くん…」 それを確認した外崎が、祐羽の頭を抱える様にして抱き締めてくれる。 「泣かないで。僕は大丈夫」 大丈夫なはずがないではないかと祐羽が首を振ると、外崎が耳に唇を寄せてきた。 「これから僕がなんとか時間を稼ぐから。その間に祐羽くんは逃げて欲しい」 「!!?」 まさかの発言で驚きに顔を上げようとするが、外崎に頭を押さえられて全く動けない。 「このままで聞いて。泣いて落ち込んでいると思われた方が都合がいいから」 戸惑ったものの外崎の言葉に頷き、話の続きに耳を傾ける。 「相手は三人。ふたりは僕が惹き付けておくから、このまま泣きすぎて体調を崩した体でトイレに行って」 あまりの突然の提案に、さっきまでの涙は止まり嗚咽だけが漏れる。 僕が逃げて、助けを呼ぶ…? 上手く出来るだろうとか不安が募る。 「見張りの男、どうもヤル気があまりないようだから。そこが狙い目だと思う。僕が出て行ったら暫く時間を開けて様子を見て逃げて」 チラリと見れば、見張り役の男が今も気だるそうにドア横の椅子に座ってスマホを観ながらペットボトルで何かを飲んでいる。 それに前の見張り役とは違いトイレまで着いて来ないことは確認済みだ。 でも、僕に出来るかな…。 「それに、外崎さんはふたり相手にどうやって逃げるんですか? !」 「祐羽くんは自分の心配だけをして。僕はこう見えてヤクザの端くれだよ?護身術も習ってるしね」 「でも、そんな無茶です!」 「僕ひとりなら相手の隙をついて逃げる方法があるんだ。だから、とにかく祐羽くんは無事に逃げて九条さん達に連絡して欲しい」 「でも、」 「いいね?約束だよ」 外崎は祐羽の顔を見て優しく笑うと「演技スタートだよ」と言って体を離した。

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