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「外崎さん…!!」 加藤の元へ向かう細身の後ろ姿が本当に消えてしまいそうで、祐羽は悲痛な声で叫んだ。 自然と涙が溢れて嗚咽が漏れ、そんな潤む視界の向こうで外崎がドアを潜り男に腕を掴まれたのを見た。 そして視界から外崎が見えなくなり、ドアが乱暴に閉じられた。 どうしよう…外崎さんが…! ひとりになってみると、孤独が急に押し寄せて来る。 祐羽は泣きながら力なくその場にズルズルと崩れ落ちて、床に頭をつけた。 中瀬は連れて行かれ、外崎の身にも危険が及んでいる。 逃げるって、僕、上手く逃げられるの?! 捕まったら今度こそもっと酷いことをされるかもしれない…。 暴力を受けた記憶、それから加藤に体を擦り付けられた感触が甦る。 絶対に二度とされたくなくて、それなら大人しく九条達が来てくれるのを待っているのが正しい選択なのかもしれない。 だけど…。 中瀬が本当に交渉に応じて解放される保証はないし、人質として自分も外崎もまだ残っているのだ。 そして、その外崎に関しては自分を庇ったばっかりに、今まさに危険が迫っていた。 あの優しくて綺麗な外崎が、加藤ともうひとりの男に凌辱される姿が頭を過る。 絶対に絶対にそんなのダメだ!! 外崎さんは僕の代わりに連れて行かれたんだから、だから僕が何とかしなきゃ…!! 祐羽は両手に力を込めると、覚悟を決めた。 「…逃げて助けを呼ぶんだ」 嗚咽を漏らしながらも、祐羽はゆっくりと体を起こした。

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