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「…分かった。分かったから、せめて服は自分で脱ぎたい」 そう言うと外崎は指を服のボタンへと掛けた。 今までたくさんのヤクザの組長に会ってきて慣れているはずだったのに、たかだか中堅のヤクザ相手に怖がるの自分に笑えてくる。 ゆっくりボタンを外して、他にも何か時間を稼がないと…。 殴られる方が何倍もマシなことをされるのが分かっていて、素直にこのまま体を差し出すわけにはいかない。 ボタンを外していく自分の手元を加藤がニヤニヤしながら見守っている。 睨み返しそれから視線を落とせば、男の股間が既に膨らんでいることに気がつきゾッとする。 男だが、この顔のせいで同性から性的な目で見られることが何度もあり、組長連中からはあからさまに誘いを受けることもあった。 しかし自分はゲイではない…というよりも、異性への興味も無い。 それは、子どもの時から紫藤しか見ていなかったからだ。 会った時から圧倒的な強者で明朗快活な紫藤は、外崎の心を直ぐに奪い、それが思春期を経て恋心に変わっていった。 決して言えないこの思いだが、側に居て紫藤の為に働けることが幸せだった。 紫藤には後腐れのない水商売相手とはいえ女の影がチラホラとあり、それが外崎の心を小さく傷つけていた。 隆成さん…。 ボタンが全て外れハラリとシャツの前を開けば、自分の胸が現れた。 男にしては乳輪近くから少し膨らみのある胸と、大きめの乳首がコンプレックスで今まで生きてきた。 悩んでネットで調べればそういう男性も世の中にいると知ったものの女顔の自分としては整形してでも治したかった。 けれどその考えを変える出来事があった。 それは昔、まだ酒に今ほど強くなかった紫藤が、盛大に酔っぱらい帰宅して来た日のことだった。

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