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結末

◇◇◇◇◇ 「はぁっ、はぁっ…それにしても本当にココどこなんだろう?」 一方、トイレからなんとか脱出を図った祐羽は、言われた通りに茂みを使って隠れながら歩いていた。 暑さと緊張で息が普段より上がり、部活でそれなりに鍛えられたと思っていたが、とても苦しい。 道路に出たものの車の気配はなく、夏の暑さに陽炎が揺らめく他は蝉の鳴き声だけ。 人に会うどころか、車の気配もない。 なるべく目立たない様に道路脇を行くが、ガードレール下は崖になっており、反対側は山であまり隠れる場所は無い。 隠れ場所の無い場所ではなるべく走って移動する。 「こっちであってるよね?」 しかし方向音痴の自覚があるだけに、本当に町へと向かっているのか心配になってくる。 「うーん。こっちに九条さんが居る気がするぞ」 九条の気など感じないが、そうでも言わなければ自分が挫けそうだった。 しかし言ったら言ったで九条が恋しくなり、気がつけば泣きながら歩いていた。 「九条さん、九条さん…。僕達のこと探してくれてるかなぁ…」 うるさいくらいの蝉の声、誰も居ない道路に自分ひとり。 夢ならどんなにいいことか。 「泣いてたらダメだ。外崎さんが危ないんだから、頑張らないと!」 グスッと鼻をすすり目元を拭うと、祐羽は泣きながら再び走り出した。 勾配のある道路をひたすら進む。 「わぁっ?!」 先の見えないカーブを小走りに急いでいれば、足が絡まり転んでしまう。 「…痛」 アスファルトに叩きつけられた衝撃で一瞬息が止まりかける。 のろのろと起きあがり痛む箇所を見てみれば、膝が擦りむけていた。 傷からは血が滲み出ていて、じわじわと痛みが増していく。

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