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「車だっ!どっちから…」 耳を澄ませると、先程と同じ方向から車が来ていることに気がつく。 今度こそはと身を乗りだしそちらに顔を向けた瞬間、祐羽は凍りついた。 遠目でも分かるあのエンジン音。 見覚えのある黒い車が、かなりのスピードで向かって来ているのが分かった。 あの人達だ…! 祐羽は直感で察すると慌てて走り出した。 カーブを曲がって次の地点まで転びそうになりながらも出来るだけ速く走る。 次に捕まったら今度こそ邪魔な自分は殺されるに違いないと思うと、恐怖から背中の汗がすっかり冷える。 荒く呼吸を繰り返しながら走り、次に現れた別れ道も街を目指して一直線に向かう。 車と人間の足を比べれば、どちらが速いかなど一目瞭然ではあるが、今は限界まで走るしか祐羽にはなかった。 曲がりくねっていた道が真っ直ぐになると、後ろから黒い車が一気に迫って来た。 「おいコラァーッ!止まれや!!」 加藤が助手席の窓から顔を出して大声で叫んでく来て、祐羽は後頭部を殴られた様な衝撃を受けた。 怖い、怖い、怖い!!! このままでは直ぐに追いつかれると思った祐羽は、向きを変えると側の脇道へと逃げる。 「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」 とにかく少しでもここより遠くへ行かなければと焦りだけが募っていき、冷静にならなければと思いながらも、なかなかそれが難しい。 こんな事になるなんて。 普通の高校生としての平凡な人生を歩んでいた自分。 あの日、あの時、九条と出会わなければ今こんな目に遇ってはいなかっただろう。 九条と出会ったことは、自分にとって最悪の選択だったのかもしれない。

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