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「ここまで来たら…」 祐羽は、視界に自分以外の存在が確認出来ない事に胸を撫で下ろした。 はぁっ…、良かった。誰も居ない。 このまま加藤達からうまく逃げられれば、街につけるはず。 そんな希望を抱いた安堵からか、ふと九条の顔と優しい声が頭に浮かんだ。 『祐羽』と優しい声で呼んで、今すぐ頭を撫でて欲しい。 できることなら、あの大きな胸元に飛び込んでぎゅっと包み込んで貰いたい。 「泣くな!大丈夫だ!絶対に帰るんだ!!」 祐羽は再び溢れそうになった涙を堪える為に力を込めて目を閉じた。 ヤクザの九条に出会わなければ、こんな目に遇うこともなかっただろう。 もしも、過去に戻れたとしたら? 九条と絶対に会わない、関係を持たない、そして恋人になんてなっていなかっただろうか? けれど、今の自分にはそんな事は微塵も考えられない。 九条と出会わなければなんて「もしも」の話さえしたくないほどに大好きなのだ。 九条と出会わなければ?と、少しだけ脳裏に掠めたさっきの自分の考えが心底許せない。 酷い目にあってもやっぱり全然嫌いになれないし、離れたいと思えない。 こんなにも好きで、巡り会えて本当に良かったと思える相手なのだから。 九条さん…!絶対に会いたい!!早く会いたいよ!!! 九条の顔を思い出し、それを力にした祐羽は、閉じていた目を開くと再び歩き出そうとした。 「!!?」 だが次の瞬間、視界の端に認めたくないものが見えピタリと止まった。

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