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1度視線を外し、それから祐羽は恐る恐るそちらへと顔を向けた。 確認したはずの曲がり道の先にある木の陰から、あの男が姿を現した。 「おいっ、くそガキ。逃げられると思ったのか?」 煩い程に泣く蝉の声をやけに遠く感じながら、祐羽は絶望に顔色をなくしてゆく。 加藤達は車から降りると低い呻く様な声を発して威圧的に祐羽を睨み付けた。 「ワハハハハッ、お前は本当にバカだな!」 心底、祐羽を小馬鹿にし意地悪く笑う。 「逃げるつもりだった様だが、こっちは街とは反対だ。残念だったな」 「え…?」 「よーく見てみろ」 そう言われ顎で示された先、カーブの向こうに見覚えのある屋根が木の合間に見えた瞬間、祐羽は漸く言われた意味を悟った。 逃げているつもりだったのが、加藤達を撒こうと別れ道や細道を利用したせいで元の場所へと戻って来ていた様だった。 「ちなみに、ここを真っ直ぐ行っても街までお前の足じゃぁ三時間は掛かるかもな」 さ、三時間…?! その言葉に絶望で目の前が真っ白になる。 自分なりに頑張ったはずなのに、報われるどころか、状況は酷くなるばかりだ。 「暑いこんな中をお前みたいなヤツが走って逃げるなんて、無謀なんだよ」 指摘され、顔を歪めた祐羽に加藤がゆっくりと近づいてくる。 「だから大人しく言うことを聞けば悪くはしねぇからよ」 「…嘘」 「嘘じゃねぇよ。戻れば外崎と同じ部屋で過ごさせてやるさ」 「嘘だ!!」 「嘘じゃねぇよ」 加藤がニヤリと下卑た笑みを見せる。 「同じ部屋で、同じよーに、俺のちんぽ突っ込んで可愛いがってやる」 その言葉に全身が凍りつき、次の瞬間祐羽は反射的に踵を返し走り出していた。

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