763 / 1012
2
紫藤に背中を押されて、外崎は祐羽と中瀬の輪に加わり、今度は三人で泣き出した。
本当に無事で良かったと、ここに三人で戻って来ることが出来、こうして新しい朝を迎えられた嬉しさを改めて噛み締める。
「本当に良かった…良かったふたりとも」
「外崎さん泣きすぎて顔がぐちゃぐちゃですよ」
中瀬の言葉に外崎が「だって」と言えば「あははっ中瀬さんもです」と祐羽が自分は棚上げで指摘する。
外崎があまりに泣くので、年下のふたりが逆に励ます立場になったところで、紫藤が三人を纏めて抱き締めてきた。
「お前ら気持ちは分かるが、こんなところで泣くな。今日は部屋で三人ゆっくりすればええけぇ、な?」
そう言われて三人が素直に頷くと、紫藤に部屋へと促される。
すると、すかさず祐羽は九条に回収された。
「は?お前…肩組むくらい良かろうが」
呆れた顔を向けた紫藤は溜め息を溢した。
「心の狭いヤツじゃな」
「黙れ」
九条の辛辣な物言いにも全く動じない紫藤を見て、本当に仲が良いことが分かる。
なんだか事件前の食事会の時を思い出して、祐羽はコッソリと笑った。
穏やかな日常が戻ってきたのだと。
広いリビングに戻った祐羽は九条の隣に座らされ、紫藤の指示で外崎の隣に中瀬が並び向かい側に座った。
遠慮した中瀬だったが、体調の良くない部下を立たせていられないと命令されれば座るしかない。
遠慮がちに座った中瀬は、可哀想な様子で縮こまってしまっていて祐羽は心配したが、外崎が気がついたのかソッと手の平を重ねてやっていた。
それで中瀬も少しは安堵した様だ。
しかし、上司である眞山が立っているのに、自分が座るのはと申し訳なさそうにしている。
けれど眞山が何やらアイコンタクトで頷いて見せると、中瀬は漸く安堵の様子を見せ祐羽と外崎もホッとするのだった。
ともだちにシェアしよう!